【はじめに】
新たに小説編の登場です。気軽に読んでくださいね。
「卵バカ」の情熱で会社を潰しかけたタマリエ社長と、血も涙もない計算マシーンのコンサル計氏。正反対の二人が「管理会計」という武器を手に、倒産寸前のどん底から世界一を目指す爆笑と感動の経営再建コメディ!「数字は、想いを守るためにあるたま!」
笑いながら経営の神髄が学べる、殻破りのビジネス小説シリーズ(全5話)。

【第一話】賞味期限切れの経営と、謎の眼鏡
「……終わった。私の人生は、床に落ちて割れた無精卵のように、もう二度と元には戻らんのだ」
我が社の社長、通称タマリエ社長は、真っ暗な社長室で「生卵」を抱いて震えていた。
かつては「卵界のカリスマ」と持て囃されたが、こだわりすぎて開発した『一個1,000円の音楽を聴かせて育てた極上卵』が全く売れず、会社は倒産寸前。今や、鶏の鳴き声すら借金の催促に聞こえる始末だ。
「社長、暗闇で卵と対話するのは時間の無駄です。その卵、1個いくらで売れて、何個売れば家賃が払えるか把握していますか?」
突如、無機質な声が響いた。そこに立っていたのは、銀縁眼鏡を光らせたスーツ姿の男。管理会計コンサルの「計(はかり)氏」である。
「誰だね君は! 今、私は卵の心の声を聴いているんだ。この子は『もっと良い羽毛布団が欲しい』と言って……」
「それはあなたの妄想です。私の計算によれば、その『羽毛布団』という名の過剰投資が、貴社の営業利益をエッグいほど圧迫しています」
計氏は手際よくプロジェクターを起動した。映し出されたのは、真っ赤なグラフ。
「見てください。この『変動費』の推移。あなたは鶏に高級クラシックを聴かせ、最高級のハーブを食べさせているが、その結果、損益分岐点がエベレストより高くなっている」
「何を言う! 卵は芸術だ! 芸術に予算など……」
「『どん底のオムレツに、高級トリュフを乗せる余裕はない』。それが管理会計の教えです」
計氏の言葉は、社長の眉間に鋭く刺さった。
「いいですか、タマリエ社長。あなたの『卵愛』を数値化し、戦略的な武器に変える。それが私の仕事です。今のあなたは、殻を割るのも怖がっているヒヨコに過ぎない」
「ヒ、ヒヨコだと……!? この私が、卵のために鶏舎で三日三晩添い寝をした、この私が!」
「添い寝の残業代、計算しましたか? ゼロですね。まさに経営の『殻』が割れていない証拠です」
社長は、手元の卵をギュッと握りしめた。
「……面白い。その『カンリカイケイ』とやらで、私の卵が再び世界を席巻できるというのか?」
「ええ。ただし、明日からあなたの感覚(センス)はすべて『数字』というスパイスで検閲させていただきます」
こうして、感情1000%のタマリエ社長と、感情0%の計算マシーン・計氏による、無謀な再建劇が幕を開けた。
社長の最初のアクションは、「高級クラシック」を「演歌」に変えてコストを削減することから始まったのだが……それはまた、次の決算(おはなし)で。
(第1話・完)
※誰が何と言おうと、完全フィクションです!


