社長の理想を見える化する管理会計

経営コンサルタントの視点から、様々なエピソードや事例を紹介。経営学を深堀りし、その根幹に迫ります。

【中小企業の組織マネジメント実践篇】 第2章 役割と責任を明確にする 第5回 管理職の本当の役割とは何か ~自分で成果を出す人から、人を通じて成果を出す人へ~

はじめに

中小企業では、仕事のできる社員が管理職に昇進するケースが多く見られます。

営業成績が優秀だった人、現場の技術に詳しい人、誰よりも責任感を持って働いてきた人。こうした人材が管理職になること自体は、決して間違いではありません。

しかし、プレイヤーとして優秀だった人が、必ずしも優秀な管理職になれるとは限りません。

なぜなら、プレイヤーとマネジャーでは、成果を生み出す方法が大きく異なるからです。


プレイヤーとマネジャーの違い

プレイヤーの役割は、自分自身が行動して成果を出すことです。

一方、管理職の役割は、部下やチームが成果を出せる状態をつくることです。つまり、管理職には「自分で成果を出す人」から「人を通じて成果を出す人」への転換が求められます。

ところが、優秀なプレイヤーほど、この転換に苦労します。

部下の仕事が遅いと、自分でやったほうが早いと考える。仕事の質が気になると、途中から自分が引き取ってしまう。その結果、管理職だけが忙しくなり、部下はいつまでも育ちません。

さらに、管理職が自分の仕事に追われることで、チーム全体の進捗や問題を把握できなくなります。

管理職の仕事は、部下の仕事を代わりに行うことではありません。部下が成果を出せるように、目標、役割、進め方を整えることなのです。


部下の目標を明確にする

部下の目標管理というと、売上高や件数などの数字を設定することだと考えられがちです。

しかし、数字を伝えるだけでは十分ではありません。

「今月はもっと売上を伸ばしてほしい」

「ミスを減らしてほしい」

「積極的に行動してほしい」

このような曖昧な指示では、部下は何をどこまで行えばよいのか判断できません。

管理職は、会社や部門の目標を、部下が実行できる具体的な目標へ落とし込む必要があります。

例えば、売上目標であれば、訪問件数、提案件数、見積件数、新規顧客への接触件数など、日々の行動まで分解します。そのうえで、期限、達成基準、優先順位を明確にします。

大切なのは、管理職が一方的に数字を押し付けることではありません。目標の意味や背景を説明し、本人と認識を合わせることです。

「なぜ、この目標が必要なのか」

「達成するために、何をするのか」

「どのような支援が必要なのか」

ここまで話し合って初めて、目標は部下自身の行動につながります。


仕事の割り振りは、育成でもある

管理職には、チームの仕事を適切に割り振る役割があります。

仕事を割り振る際に重要なのは、単に手が空いている人へ任せるのではなく、部下の能力、経験、業務量、今後の成長を考慮することです。

いつも同じ人に難しい仕事を任せていると、その人に仕事が集中します。一方、経験の浅い社員には簡単な仕事しか回らず、成長の機会が失われます。

管理職は、現在の効率だけでなく、将来の組織力まで考えなければなりません。

少し難しい仕事を任せ、必要な場面で支援する。成功や失敗を振り返り、次の仕事につなげる。この繰り返しによって、部下は成長していきます。

したがって、仕事の割り振りは、単なる作業分担ではありません。人材育成そのものでもあるのです。

ただし、仕事を任せることと、丸投げすることは違います。

任せる際には、少なくとも次の点を明確にする必要があります。

  • 何を達成するのか
  • いつまでに行うのか
  • どこまで本人が判断できるのか
  • どの段階で報告するのか
  • 困ったときに誰へ相談するのか

ここが曖昧なままでは、部下は安心して仕事を進められません。


進捗確認は「監視」ではない

仕事を任せた後、管理職には進捗を確認する責任があります。

しかし、細かく口を出し過ぎると、部下は「信用されていない」と感じます。反対に、結果が出るまで放置すれば、問題の発見が遅れてしまいます。

重要なのは、あらかじめ確認のタイミングを決めておくことです。

例えば、「毎週月曜日に進捗を確認する」「期限の半分を過ぎた時点で中間報告を受ける」といったルールを設けます。

定期的な進捗確認では、結果だけでなく、次の点を確認します。

  • 予定どおりに進んでいるか
  • 目標との間に差が生じていないか
  • 判断に迷っていることはないか
  • 他部門との調整が必要ではないか
  • 管理職の支援が必要ではないか

進捗確認の目的は、部下を監視することではありません。仕事が止まる原因を早めに見つけ、成果が出るように支援することです。


問題を早期に発見できる組織をつくる

管理職にとって、問題が起きないことよりも重要なのは、問題を早い段階で把握できることです。

現場では、予定の遅れ、顧客からの不満、作業ミス、人間関係の悪化など、さまざまな問題の兆候が表れます。管理職がその兆候を見逃すと、小さな問題が大きな損失へ発展します。

ところが、日頃から部下を強く叱責していると、悪い情報ほど報告されなくなります。

部下が問題を隠すのは、責任感がないからとは限りません。「報告すれば怒られる」「自分の評価が下がる」と感じている場合もあります。

管理職は、問題を報告した人を責めるのではなく、早く報告したことを評価する姿勢を示す必要があります。

「なぜ失敗したのか」と責任を追及する前に、「今、何が起きているのか」「どのように対処するのか」を一緒に考える。その積み重ねが、悪い情報ほど早く上がってくる組織をつくります。


管理職は、経営と現場をつなぐ存在

管理職は、単に現場を取りまとめる人ではありません。

経営者の方針を現場の具体的な行動へ落とし込み、現場で起きている事実や問題を経営者へ伝える、経営と現場をつなぐ重要な存在です。

優秀な管理職がいる組織では、経営者が細かな指示を出さなくても、現場が一定の判断基準に基づいて動きます。一方、管理職がプレイヤーのままでは、あらゆる判断が経営者に集中し、組織の成長が止まってしまいます。

管理職に求められるのは、自分一人の能力で目の前の仕事を終わらせることではありません。

部下の目標を明確にし、適切に仕事を割り振り、進捗を確認し、問題を早期に発見する。そして、部下が自分で考え、行動し、成果を出せるように支援することです。

管理職の成果は、本人がどれだけ忙しく働いたかではなく、チーム全体がどれだけ成長し、継続的に成果を出せるようになったかによって判断されるべきです。

「自分がやったほうが早い」という考えを手放し、人を通じて成果を出す。

そこから、本当の意味での管理職への成長が始まります。


次回予告

次回は、第6回 会議を意思決定の場に変える
~報告を聞くだけの会議から、次の行動を決める会議へ~

会議の目的や意義、進め方等について考えます。