
はじめに
これまで、このブログでは、
「会社の存在価値を明確にする」
コーポレートブランド経営篇
↓
「経営状態を数字で把握する」
管理会計実践篇
↓
「限られた経営資源の使い方を決める」
戦略思考実践篇
↓
「決めた戦略を、現場の成果へ変える」
組織マネジメント実践篇
という流れで、理念・数字・戦略・組織マネジメントを順番につないできました。
しかし、どれほど優れた理念や戦略があっても、それを実行するのは「人」です。
社員一人ひとりが成長し、それぞれの役割を果たし、その成果が適切に評価されなければ、会社の持続的な成長にはつながりません。
そこで次のシリーズでは、「社員一人ひとりの成長と処遇」をテーマに、中小企業の人材育成・評価制度実践篇をお届けします。
採用、教育、目標設定、面談、評価、賃金、生産性など、「人」に関する経営課題を一つの流れとして捉え、中小企業が実践できる仕組みを考えていきます。
また、私自身が本年度から取り組んでいる人事評価制度についても、実際に生じた課題や改善の過程を、具体的な事例として紹介していく予定です。
制度をつくるだけでは、組織は変わりません。
実際に運用してみて初めて見えてくる問題と向き合いながら、社員の成長と会社の成果をどのように結びつけるのかを考えていきます。
このシリーズの中心メッセージ
人事評価制度は、社員に点数をつけ、順位を決めるための仕組みではありません。
会社が求める人材像を明確に示し、社員の成長を支援し、その成長を経営成果につなげるための仕組みです。
特に中小企業では、評価制度だけを導入しても十分には機能しません。
会社が求める社員像を示し、必要な教育を行い、目標を設定し、定期的に対話し、その過程と成果を評価する。そして、評価を役割や賃金、将来の成長へつなげていく必要があります。
本シリーズでは、
「採用・教育・目標・面談・評価・賃金・生産性」
を一つの循環として捉えます。
評価制度の目的、経営者・管理職・社員それぞれの責任、評価と処遇の関係など、中小企業が人材育成と評価制度を機能させるための考え方を掘り下げていきます。
シリーズの構成

中小企業の人材育成・評価制度実践篇
~社員の成長と会社の成果を一致させる~
第1章 人材育成の基本を整える
第1回 なぜ社員が育たない会社になるのか
~人材育成を、本人のやる気だけに任せない~
- 人が育たない会社の共通点
- 求める社員像の曖昧さ
- 教育と仕事の丸投げの違い
- 人材育成における経営者の責任
- 育成を仕組みに変える
第2回 会社が求める社員像を明確にする
~評価制度をつくる前に、成長の方向を示す~
- 経営理念と求める人材像
- 能力・姿勢・成果の整理
- 一般社員と管理職の役割の違い
- 抽象的な人物像を具体的な行動に落とし込む
- 求める人材像と評価項目を結びつける
第3回 中小企業の採用は何を基準に判断するのか
~優秀な人より、自社に合う人を採用する~
- 採用したい人物像
- 経験・能力・価値観の見極め
- 面接で確認すべきこと
- 採用後のミスマッチを防ぐ
- 採用コストと早期離職
第2章 社員が育つ仕組みをつくる
第4回 新人を早く戦力化する教育の仕組み
~「見て覚えろ」から、教えて育てる会社へ~
- 入社時教育
- 業務手順の標準化
- 教える人による違いをなくす
- 30日後・90日後・半年後の到達目標
- 独り立ちまでの進捗確認
第5回 社員の能力をどのように高めるか
~研修だけでは、人は育たない~
- 知識・技能・経験の違い
- OJTとOff-JT
- 少し難しい仕事を任せる
- 失敗から学ぶ仕組み
- 育成計画のつくり方
第6回 管理職をどのように育てるか
~優秀な社員が、優秀な管理職になるとは限らない~
- プレイヤーと管理職の違い
- 部下を通じて成果を生み出す
- 仕事の割り振りと進捗管理
- 部下へのフィードバック
- 管理職自身の評価基準
第3章 目標・面談・評価を機能させる
第7回 社員の成長につながる目標設定とは
~会社目標と個人目標を一本の線でつなぐ~
- 会社目標・部門目標・個人目標の関係
- 結果目標と行動目標
- 適切な目標水準
- 数字にできる目標と、数字だけでは測れない目標
- 状況に応じて目標を修正する
第8回 評価面談を成長の機会に変える
~点数を伝えるだけでは、社員は育たない~
- 評価面談の目的
- 自己評価と上司評価
- 評価の違いについて対話する
- 事実と印象を分ける
- 次の行動を決める面談
第9回 納得感のある人事評価制度をつくる
~公平とは、全員を同じように評価することではない~
- 成果評価・行動評価・能力評価
- 評価項目を増やしすぎない
- 5段階評価の基準を明確にする
- 評価者によるばらつきを抑える
- 評価結果に対する納得感を高める
第4章 評価を処遇と経営成果につなげる
第10回 人事評価と賃金をどう結びつけるか
~評価制度を、昇給を決めるだけの仕組みにしない~
- 基本給・昇給・賞与の役割
- 年功・能力・役割・成果の考え方
- 評価結果を賃金へ反映する方法
- 人件費総額との整合性
- 無理なく続けられる賃金制度
第11回 社員の成長を生産性につなげる
~人数ではなく、付加価値を生み出す力を見る~
- 労働生産性
- 一人当たり売上高
- 一人当たり粗利益
- 労働分配率
- 教育投資と経営成果
- 社員の頑張りを利益へつなげる仕組み
第12回 人材育成と評価制度を管理会計で検証する
~人への投資を、会社の未来へつなげる~
- 人材に関するKPI
- 採用充足率・定着率・離職率
- 教育時間・資格取得・技能習得
- 評価・賃金・生産性の因果関係
- 人件費と付加価値のバランス
- 制度を継続的に改善する
- 社員の成長と会社の成長を一致させる
次回予告
次回から、いよいよ新シリーズが始まります。
中小企業の人材育成・評価制度実践篇
~社員の成長と会社の成果を一致させる~
第1章「人材育成の基本を整える」の第1回は、
なぜ社員が育たない会社になるのか
~人材育成を、本人のやる気だけに任せない~
をテーマにお届けします。
「社員がなかなか育たない」
「何度教えても、仕事を覚えてくれない」
「本人に成長する意欲がない」
このような悩みを、社員本人の能力や、やる気だけの問題にしていないでしょうか。
次回は、人が育たない会社に共通する問題を整理しながら、人材育成における経営者や管理職の責任、そして社員を継続的に育てる仕組みのつくり方について考えていきます。